院内一丸で「身体拘束最小化」に挑む聖隷三方原病院
静岡新聞DIGITALの発表・報道によると、浜松市にある聖隷三方原病院が、入院患者に対する身体拘束を「最小化」することを目標に掲げ、院内全体を巻き込んだ取り組みを進めています。この取り組みを主導するのは、老人看護専門看護師(CNS)の資格を持つ佐藤さんで、「徹底的な対話と配慮が不可欠」とその姿勢を強調しています。
身体拘束とは、転倒・転落の防止や治療に必要なチューブ類の自己抜去防止などを目的として、患者の身体の動きを制限する行為を指します。医療現場では安全管理上やむを得ない場面もある一方、患者の尊厳や生活の質(QOL)への影響が大きいとして、近年は「できる限り行わない」方向への転換が求められています。
同病院の取り組みが特徴的なのは、特定の病棟や職種に限らず、「院内全体」での実践を目指している点です。佐藤さんが強調する「徹底的な対話」は、患者・家族との丁寧なコミュニケーションはもちろん、医師・看護師・介護職など多職種間での情報共有や意思統一をも含むものと考えられます。
老人看護専門看護師(CNS)の役割とは
今回の取り組みで中心的な役割を担っている「老人看護専門看護師」は、日本看護協会が認定する専門看護師(CNS)の一分野です。高齢者特有の健康問題や生活課題に対して高度な実践・相談・調整・教育・研究・倫理調整の機能を発揮することが期待されており、病院内でのケアの質向上をリードする存在として位置づけられています。
身体拘束の問題は、高齢患者が多い急性期病院においても避けては通れない課題です。認知症や術後せん妄(手術後などに生じる意識の混乱状態)を抱える患者への対応として、専門的な知識と倫理的視点を持つCNSがチームをまとめる意義は大きいといえるでしょう。
【編集部の見解】医療・介護現場が「拘束しない文化」を築くために
身体拘束の最小化は、医療・介護業界全体に共通する重要テーマです。一般に、身体拘束は患者・利用者の身体的・精神的な状態に悪影響を与えるリスクがあると指摘されており、行政の指導や診療報酬・介護報酬の仕組みにおいても、その抑制に向けた方向性が示されてきています。
今回の報道が示すように、拘束を減らすためには「個人の努力」だけでなく、施設・病院全体としての仕組みづくりや文化の醸成が重要ではないでしょうか。具体的には、多職種カンファレンスの定期開催、判断基準の標準化、スタッフへの倫理教育といった組織的アプローチが鍵になると一般に言われています。
また、資格・キャリアの観点からは、老人看護CNSや認知症看護認定看護師などの専門資格を持つ人材が、組織変革の旗振り役として機能する事例が増えています。専門資格の取得を検討している看護師の方にとって、こうした実践事例はキャリアの方向性を考えるうえで参考になるのではないでしょうか。現場で「変えたい」と感じている方は、自施設での勉強会の提案や、専門資格への挑戦を一つの選択肢として検討してみてもよいかもしれません。