3団体が連名で国に訴えた「訪問看護師の賃上げ」
介護ニュースJointの発表・報道によると、日本看護協会を含む3つの関連団体が連名で、2025年度の介護報酬改定(介護サービスの公定価格を見直す制度改正)に向け、全ての訪問看護師の賃金引き上げを求める要望書を国に提出しました。訪問看護とは、看護師などが利用者の自宅や生活の場に出向いてケアを行うサービスのことです。近年は在宅医療・在宅介護の需要が高まる中で、その担い手である訪問看護師の確保が業界全体の課題となっています。
今回の要望の背景には、訪問看護ステーション(訪問看護を提供する事業所)の人材不足が深刻化しているという現実があります。病院や診療所などほかの医療機関と比べても、訪問看護師の賃金水準は必ずしも高いとは言えず、これが離職や採用難につながっているとの指摘が以前からありました。3団体は今回、制度上の報酬設計を見直すことによって「全ての訪問看護師」の処遇を底上げするよう、国に強く求めた形です。
介護報酬改定と賃上げ議論の現状
介護報酬は原則3年ごとに改定されます。直近では2024年度に改定が行われたばかりですが、次の改定サイクルに向けた議論はすでに動き出しています。政府は近年、医療・介護分野における賃上げを重要課題と位置づけており、処遇改善加算(一定の条件を満たした事業所が追加で報酬を受け取れる仕組み)の拡充などが進められてきました。しかし、加算の取得要件や算定の複雑さから、恩恵が十分に届いていない事業所や職員も少なくないとされています。
今回の要望書が「全ての訪問看護師」という表現を用いたことには意味があります。現行の仕組みでは、処遇改善の恩恵が特定の事業所や雇用形態に偏りやすい構造があるとも言われており、非常勤や夜間対応に当たる看護師なども含めた一律の底上げを求める声が現場から上がっていました。3団体の要望はこうした現場の声を制度論として国に届ける重要な一手と言えます。
現場で働く人・働きたい人への影響と備え方
現在、訪問看護ステーションで働いている看護師にとっては、今後の報酬改定の議論を注視することが大切です。要望が反映されれば、基本給や各種手当の見直しにつながる可能性があります。ただし、改定内容が確定するまでには国の審議会(社会保障審議会)での議論を経る必要があり、現時点では要望段階であることを念頭に置いておきましょう。
訪問看護への転職や就職を検討している看護師・准看護師の方にとっては、処遇改善の機運が高まっているこのタイミングは、業界動向を学ぶ好機です。求人情報を確認する際には、処遇改善加算を取得しているかどうか、加算分が実際に給与に反映される仕組みになっているかを事業所に確認することをお勧めします。
管理者・経営者の立場では、今後の改定議論に対応できるよう、処遇改善加算の算定要件の整備や職員への説明体制を今から整えておくことが重要です。賃上げの原資となる報酬体系の変化を先取りして、採用・定着の戦略を見直す絶好の機会でもあります。制度の動向を継続的にウォッチし、改定内容が固まり次第、速やかに対応できる準備を進めておきましょう。