導入費は数億円から60億円超―規模によって異なる重い負担

日テレNEWS NNNの発表・報道によると、電子カルテ(診療録を電子的に管理するシステム)の導入にかかるコストが医療機関の経営を深刻に圧迫しており、一部の県医師会が国に対して財政支援を求める要望活動を行う方針を示しました。報道では、導入費用は一般的な医療機関でも数億円規模に上り、大学病院では最大60億円を超えるケースもあると伝えられています。

電子カルテの普及は、医療DX(デジタルトランスフォーメーション:医療分野のデジタル化推進)の中核に位置づけられており、政府も普及拡大を政策目標に掲げています。しかしその一方で、システムの初期導入費用だけでなく、運用・保守・更新に伴うランニングコストも継続的に発生するため、特に中小規模の病院やクリニックにとっては、経営上の大きな足かせとなっているのが実態です。

なぜ今、支援要望が高まっているのか

電子カルテの導入をめぐる問題は以前から指摘されてきましたが、ここにきて声が大きくなっている背景には、国を挙げた医療DX推進の加速があります。政府は医療情報の連携基盤として「電子カルテ情報共有サービス」の整備を進めており、医療機関側には事実上、システム対応が求められる流れになっています。

加えて、2024年度の診療報酬改定(医療サービスの公定価格の見直し)でも、電子的な情報管理や連携に関する加算項目が新設・拡充されており、電子カルテを導入していない施設は加算を取得できず、収益面でも不利になるという構造が生まれています。「導入しなければ損、しようとすれば多額の費用がかかる」というジレンマが、現場の経営者を追い詰めている状況です。

医師会が国への要望という形で動き出したことは、こうした現場の切迫感を反映したものといえます。補助金の拡充やシステム標準化による価格低減など、具体的な支援策の実現が求められています。

現場で働く人・転職を考える人への影響と備え

電子カルテの導入コスト問題は、施設の経営層だけでなく、現場スタッフやキャリアを考える医療・介護従事者にも直接影響を及ぼします。まず、コスト負担が大きい施設では、人件費や設備投資を含む予算全体が圧迫され、賃上げや人員増強の余地が狭まる可能性があります。医療・介護分野では人材確保競争が激しさを増しているだけに、施設の財務体力は働き手にとっても無視できない要素です。

一方で、電子カルテの操作スキルや医療DX関連の知識を持つ人材への需要は高まっています。医療事務や看護師、薬剤師などの職種においても、システムを使いこなせる人材は即戦力として評価される場面が増えており、資格取得や転職活動においてITリテラシーのアピールが有効になってきています。

施設を選ぶ際には、電子カルテの導入状況や更新計画を確認することも一つの視点です。システムが古いまま更新できていない施設は、業務効率だけでなく経営の安定性という観点からも注意が必要です。国の支援策の動向を継続的に追いながら、自分のキャリア形成に役立てていくことが求められます。